【15/64】地山謙(ちざんけん)
※「謙」はへりくだるの意味。
「山の高きをもって地の低きにくだる」 道徳、礼節を尊ぶことが全ての根本。
象徴としては、高い山の土を運んできて、低い土地を埋め立て地ならしをするさま。
=自分の有り余っているものを人に分け与えるとされる。
ひとつ前の火天大有は「大いに栄え富んでいる」ことが書かれていました。富を持つことは他者からの嫉妬やその状況に甘んじて災いを招く原因とされる。そのような状況を招かないためには「謙譲」をもってするしかない。
たとえ位が人の下であろうとも、優れた人が富んでいても思い上がらない。やがて実力を発揮し、永く富を保つことになろう。という卦です。
卦辞「謙は亨る。君子終り有り。吉」
謙譲の姿勢は、途中で「止めた止めた!」とすると、アイツ今まで猫をかぶっていたのかと却って悪く言われることになる。やり遂げるのは容易なことではなく君子のように立派な方でないと達成できないとされる。それが「君子終り有り」の部分。
上爻:あまりにも不遜な者は・・・
爻辞「鳴謙(めいけん)。用いて師を行り(しをやり)邑国(ゆうこく)を征するに利ろし」
⇒謙虚である人を見習う。領地内で服従しないものは懲らしめて良い。
(師は戦のこと。ただしここでは国内統治のためのもの)
5爻:悩み多き君子は・・・
爻辞「富まず。其の隣を以ゆ。用いて侵伐するに利ろし。利ろしからざるなし」
⇒自分のことを強いとか富んでいるとか思わない君子。そこで自分の悩みを下位のものに相談して国を治めている。謙遜しすぎも「弱い君主だ」と侮りを受けるが、謙徳を無力と言い服さない者は懲らしめて良いと書かれている。
(陽位に陰爻で立場を得ていない君子ということに。之卦が「水山蹇」のため、悩みが多く、誰かの助けを待つという意味合いを含む)
4爻:部下を引き立てます。
爻辞「利ろしからざるなし。謙を撝く(まねく)」
⇒正位を得ている爻で、また3爻とも協力しあう関係。自分を立てずに、下位にいる才知を挙げ用いている。(自分のことを置いて他を引き立てている様)
3爻:自分も他者も・・・
爻辞「労謙(ろうけん)。君子終り有り。吉」
⇒大きな功績があっても、初めから終わりまで深く謙遜をしている。
優れた能力や大きな功績がありながらも終始謙遜している。誰からも尊敬される。
(終始謙遜し続けるのは難しいことだから)
この3爻は自らが励むだけでなく、他の爻も引き連れて(※)謙を行わなければならないので責任が重く労謙(=骨が折れる)と書かれている。
※唯一の陽爻で、応爻(協力し合う関係)や比爻(引き合う関係)になる爻が多い。
2爻:お手本にして努める姿
爻辞「鳴謙(めいけん)。貞吉」
⇒謙虚である人を見て、それに習う。そのように正しくしていれば吉。
3爻を見てとても柔順な2爻。自分もそれに習おうとする。
初爻:重ねて重ねて
爻辞「謙謙(けんけん)。君子用て大川を渉る。吉」
⇒謙遜の上に謙遜を重ねる。立派な君子のようにしていれば、大川を渉るように大きなことを成し遂げられるでしょう。
一番下っ端な初爻。いくら自分が優れていようとも、君子のように腰を低くしている。その姿勢が素晴らしいと書かれている。
序卦伝:
大を有する者はもって盈つるべからず。故にこれを受くるに謙(けん)をもってす。
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